元ラグビー日本代表が再びスクラム!トンガ復興クラウドファンディングにかける思いとは
▼【本編】
海底火山の大規模噴火と津波に見舞われた南太平洋のトンガ。元ラグビー日本代表のメンバーが中心となり復興に向けたクラウドファンディングを開始した。大反響を呼び多くの人がスクラムを組んだプロジェクトにかける思いとは。プロジェクトの中心メンバーである真壁伸弥氏が日本代表での秘話や、名将エディー・ジョーンズとの思い出と共に語った。
人生に潤いを与えてくれるラグビー
【目次】
- 過去のスポーツとの出会い
- 当時の夢について
- 選手キャリアの始まり
- エディー・ジョーンズについて
- 現役時代最も衝撃だった出来事とは?
- 日本ラグビーの歴史を変えた日本代表秘話
- 一番印象に残っている試合について
- トンガ大規模噴火災害緊急支援プロジェクトへの思い
- 若い世代に伝えたい事
──選手時代の事件や障壁を教えていただけますか?
やっぱり一番の事件はエディー・ジョーンズ(現イングランド代表監督)っていう人に会ったことだと思います。やっぱり彼のラグビーの考え方だったり、チームを作るスタイルってのは本当に衝撃的で。
彼の言葉には“重み”があったっていう。言葉に重みを作るための作業をしていて。僕がワールドカップのメンバーに選ばれた2013年のウェールズ戦の後だったんですね。2015年(W杯)の発表の大分2年ぐらい前から、ワールドカップには連れて行く。ただし19番ねって言われたんです。
もうその時にリザーブ(控えメンバー)なんだと思ってすごいショックを受けたんですけど。ワールドカップいけるけどリザーブなんだみたいな。ちょっと悩んだんですけど、でもそういう風に言うってことは、リザーブで必要な選手っていうことなんだろうなと思って。
やっぱり彼と出会ったことによって、リザーブはリザーブの仕事があると。スターティングも大事なんすけどリザーブの選手も大事にし、試合を締めるというか。成り行きを見れる選手というのが必要。1人1人必要なポジションを与えて、その必要なポジションが揃っているチームが日本代表なんだなっていうことをすごい理解できたんで。
自分の役割というのをしっかり見つける。自分から見つけるのも大事だし、上からトップダウンで出すっていうのも大事というエディー監督の考え方は今もビジネスにも通じるので、ずっと大事にできればと思っています。
“歴史変えるの誰よ”という言葉を言えたのも、多分その気持ちがずっとあったから
──選手時代に心掛けたことはなんでしょうか?
廣瀬さん(元ラグビー日本代表キャプテン)が2012年に
“ラグビーの歴史を変えたい”
“ラグビーの地位を上げたい”と。
このままいったら多分日本ラグビーって本当にもうメジャースポーツにもならずに、マイナースポーツで終わるんだろうなと思っているときに、廣瀬さんやいろんな選手が、せっかく代表になったんだったら変えたいっていう気持ちもあって。
目標というか、目的というのをしっかりと最初の集まりで、エディー監督とともに話してくれたんで。トップ10になって、日本のラグビーを変えて、子供たちが日本代表のジャージを着て、誇りを持てるようなチームになろうということ言ったときに、すごくその言葉が刺さったんですね。彼のすごいところっていうのは彼もエディー監督同様、言葉に力があったっていう。
その言葉がやっぱり2015年(W杯)までは支えになりました。なので南アフリカ戦(2015年9月15日優勝候補の南アフリカを日本が破りスポーツ史に残る番狂わせと語り継がれる試合)でルーク・トンプソン選手が“歴史変えるの誰よ”という言葉を言えたのも、多分その気持ちがずっとあったから、やれたんじゃないかなあとは思ってます。
──選手時代での最も心に残る試合を教えてください
代表はやっぱりワールドカップ直前のウルグアイ戦ですかね僕は。人生で一番楽しい10分間でした。
僕はワールドカップの前の年に、筋断裂をトップリーグの決勝でやって、本番の約7ヶ月前かな。両足の肉が全部切れて、歩けない状態で終わったなと思ったんですよ。手術だし。
病院で思いっきりガン泣きしたんですよ生まれて初めて。次の日の朝にエディー監督がやってきて、一番最初にワールドカップに向けて、前のヤマハ戦のレビューをしにきたんですよ(笑)
そのままレビュー終わった後に、ジョン・プライヤーコーチが入ってきて“待ってるぞ”って言って。でも上っ面と思うじゃないすか。筋断裂だから。
でもその後にいろんなプロフェッショナルの先生たちが来て、ここまでにこのリハビリをやってっていう計画プランを持ってきて。“あっ本気だ”ていうっていう状態になって、すごく恥ずかしくなったんですね。そこで諦めかけた自分が。
なので彼らにやっぱ報わないといけないと思ったんで。でウルグアイ戦で、エディー監督にはたった10分だけって言われていて。本当に10分で交代されたんですけどその10分の間は、面倒見てくださったスタッフ陣のためにも、一番の姿を見せなきゃいけないなと思って“人のために動けた10分間”だったんで、一番楽しくて一番いいパフォーマンスだったと思います。
ラグビーはあくまでもスポーツで、自分の人生を潤う手段の一つ
──今回のクラウドファンディングのプロジェクトにも結びつくのでしょうか
元々何か自分の為ってあんまり僕の場合は、力を発揮しないタイプで。トンガのプロジェクトも一緒にやってきた仲間たちがしんどい思いをしてると思うんですよ。
私も東北の震災のときには地元でなんとも言えない気持ちになったのを覚えてるので。そのときにラグビーで復興支援で子供たちとラグビーをするとか、ジャージを配るってことを率先してやってたんですけど。そのときに支援とか、そういう活動っていうのは相手に伝わるんだなということを実感できたので。特に福島の子供達はずっとラグビーやってて
“本当に帰りたくない”って言ってて。
“なんでや帰れって”言ったら
“帰っても、電気も何もないし、しんどいしここにいた方が面白くて、忘れられる”
っていうことを聞いて、少なからずこの人の為にいい時間作れたんだなと思ったら、支援ってすげえ大事だなと思ってて。
なのでトンガも多分しんどいと思うから、何かしら行動しなきゃ駄目だなと思ってて。賛否両論はいろいろあるんすけど、できることやろうかなって思ったときにタイミングが重なったんで、今回、プロジェクトをやろうかなと思いました。
──現役時代に戻れるとしたら?
本当に僕が今後悔してるのは1日1日、素晴らしい人たちの中で囲まれて練習やってたんですけど、彼らから学んだ事をしっかりと、自分の中にインストールしないで1日を過ごしていたのを本当に悔やんでるので。ラグビーで出会った人たちっていうのは本当に素晴らしい人たちが多いので。
──現役の選手たちに伝えたいことはありますか?
ラグビーだけやってても絶対は潤わないので。ラグビーはあくまでもスポーツで、自分の人生を潤う手段の一つであって。
本当にいい選手、例えばジョージ・スミス、ジョージ・グレーガン、スティーブン・ラーカムだったりいろんな人と話してきましたけど、彼らってやっぱりラグビーだけじゃない。
ラグビーだけやってたって絶対いい選手になれないって事を知ってる選手なので。自分の人生の土台をしっかりやってのラグビーなんですね。そこで初めていいパフォーマンスができるんで。ラグビーだけをやりたいって思ってても、それだけじゃうまくいかないよってことを伝えたいですね。
真壁伸弥(まかべ・しんや)
ポジションはロック(LO)。仙台工業高校でラグビーを始め、その後中央大学に進学し、U19日本代表主将を務めた。大学ではニュージーランドに留学を経験。2009年にサントリー入りし、1年目からトップリーグの新人賞とベスト15をダブル受賞。同時に2009年に日本代表初キャップを獲得。2015年ラグビーワールドカップメンバー。2016年度、17年度のサントリーの2季連続2冠にも貢献。2019年に現役を引退し現在はサントリー酒類株式会社で勤務。ウィスキープロフェッショナルの資格を持つ。
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